MENU

痛みはなぜ起きる?見えない痛みの正体

痛みはなぜ起きる?見えない痛みの正体

痛みは、私たちの身体を守るための大切なサインです。しかし、中には原因がはっきりしないのに長く続く「見えない痛み」に苦しんでいる方もいらっしゃいます。今回は、そんな痛みのメカニズムと、その痛みにどう向き合っていくかについてお話しします。


身体の警報システム:急性痛と慢性痛 ⚠️

痛みには、大きく分けて**「急性痛」「慢性痛」**の2種類があります。

急性痛

転んで擦り傷ができたり、どこかに手をぶつけたりしたときの痛みは急性痛です。これは、組織が損傷したことを脳に知らせることで、さらなる怪我を防ぐための**「警報システム」**として機能します。通常、傷が治癒するとともに痛みも消えていきます。この痛みは、身体の正常な反応といえるでしょう。

慢性痛

一方で、腰痛や肩こりのように、明らかな外傷がないにもかかわらず、痛みが3ヶ月以上続くものを慢性痛と呼びます。これは、警報システムが「誤作動」を起こし、いつまでも鳴り続けている状態と考えられます。


慢性痛の知られざる要因:脳と痛みの関係 🧠

慢性痛は、単に身体の組織が損傷しているだけでなく、脳と神経系の変化が深く関わっていることが近年の研究で明らかになっています。

中枢性感作:見えない痛みのスイッチ 🧠

慢性痛の背後には、**「中枢性感作」**という脳と神経系の変化が深く関わっていることが近年の研究で明らかになっています。2020年のレビュー論文では、慢性痛が脳の機能的・構造的変化を引き起こすことが示されています[^1]。

これは、簡単に言うと**「脳と脊髄が痛みに敏感になりすぎる状態」**です。慢性的な痛みによって神経回路が変化すると、まるで火災報知器の感度が上がりすぎるように、わずかな刺激でも強い痛みとして感じてしまいます。(例えば、お化け屋敷にいる時を想像してみてください。普段なら気にも留めないような小さな物音にも、ビクッと肝を冷やしてしまいますよね。それと同じで、長く続く痛みによって神経が警戒モードに入ってしまうと、ほんの少しの刺激でも「激しい痛み」として感じ取ってしまうのです。)

  • 痛みの範囲が広がる:本来は痛みを感じないはずの、軽く触れるだけの刺激でも痛みとして認識するようになります。
  • 痛みが長引く:ケガが治っても、神経が痛みを「記憶」しているため、痛みがなかなか消えません。

このように、中枢性感作は**「痛みの悪循環」**を生み出し、慢性的な痛みをさらに悪化させる要因となります。


日常生活での中枢性感作

例えば、肩こり腰痛が長引いている場合、中枢性感作が起きている可能性があります。

  • 「触るだけで痛い」:肩や腰を少し押されただけで強い痛みを感じる。
  • 「常にジンジンする」:特別なことをしていないのに、絶えず鈍い痛みを感じる。

このような痛みは、単なる筋肉の張りや姿勢の問題だけでなく、脳が痛みを学習し、過剰に反応しているサインかもしれません。

心理社会的要因

また、ストレス、不安、不眠などの心理的な要因が痛みを増幅させることもわかっています。慢性的な痛みは、単なる身体の不調ではなく、心や社会的な状況と複雑に絡み合っているのです。


痛みの連鎖を断ち切るために 💡

「痛いから動かない」という選択は、筋肉をさらに硬くし、痛みを悪化させる可能性があります。痛みの悪循環を断ち切るためには、視点を変えることが大切です。

  • 「痛くない動き」を理解する :痛みのない範囲で少しずつ身体を動かすことで、脳に**「この動きは安全だ」**と学習させることができます。痛みを感じにくいストレッチや軽い運動から始めてみましょう。
  • 痛みから離れる時間を作る :痛みに意識を集中させすぎると、脳の痛みの回路が活性化してしまいます。趣味や好きなことに没頭する時間を作り、意識的に**「痛みから解放される時間」**を作ることも大切です。

慢性痛は複雑で、一人ひとりの状況が異なります。このブログでは、皆さんが痛みと上手に付き合い、より快適な生活を送るためのヒントをこれからもお届けしていきます。

[^1]: Ilias, I., et al. (2020). The relationship between chronic pain and central sensitization: A review of the literature. Journal of Pain Management, 13(3), 15-22.
Mears L, et al. The pathophysiology, assessment, and management of acute pain. Br J Nurs. 2023 Jan 26;32(2):58-65.
Nicholas M, et al. The IASP classification of chronic pain for ICD-11: chronic primary pain. Pain. 2019 Jan;160(1):28-37.
Raja SN, Carr DB, et al. The revised International Association for the Study of Pain definition of pain: concepts, challenges, and compromises. Pain. 2020 Sep 1;161(9):1976-1982.

体の悩みがあればこちらに相談してください! 
reha.de.111@gmail.com

岡永

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次